顧問税理士に決算と申告はお願いしているが、経営の相談相手にはなっていない――そんなもやもやを抱える中小企業の経営者は少なくありません。税理士の選び方で最も分かりやすい基準は、事業計画を一緒に作ってくれるかどうかです。本記事では、税理士を見極める5つのチェックポイントと、資金調達への伴走力の見方を、税理士法人の立場から解説します。

この記事の結論:税理士の選び方は「①事業計画を一緒に作るか ②資金調達・銀行対応に伴走するか ③月次でモニタリングする仕組みがあるか ④人と組織の話までできるか ⑤料金と対応範囲が明確か」の5点で見極めます。決算と申告は過去を確定させる仕事、事業計画と資金繰りは未来をつくる仕事です。両方を任せられるかどうかが、顧問税理士を「経営のパートナー」にできるかの分かれ目になります。

税理士選びで中小企業の経営者が抱える悩み

顧問税理士との付き合い方を業績資料を前に考える中小企業の経営者
「決算だけの付き合い」で本当にいいのかを問い直す

税理士選びの悩みは、金額やスピードよりも「経営の相談相手になっていない」という一点に集約されます。年商1億円〜10億円の成長フェーズに入ると、必要な支援の中身が変わってくるためです。まずは、よく聞く3つの悩みを整理します。

「記帳と申告だけ」で終わっていないか

創業期は、正確な記帳と期限内の申告をしてもらえるだけで十分でした。しかし社員が増え、借入も増え、事業の選択肢が広がってくると、必要なのは数字を根拠に一緒に考えてくれる相手に変わります。決算書が出来上がるのが決算から数か月後で、その内容も「今期はこうでした」という報告で終わってしまう――この状態が続くと、税理士との関係は事務手続きの委託先にとどまります。悪い仕事をしているわけではなく、お互いに期待する役割がすり合っていないだけというケースがほとんどです。

何を基準に比較すればいいか分からない

いざ税理士を比較しようとしても、判断材料が乏しいのが実情です。料金は比べられても、提供される中身は事務所ごとに大きく異なり、外からは見えにくいためです。「経営に強い」「融資に強い」といった表現も、実際に何をどこまでやってくれるのかは契約前には分かりません。だからこそ、抽象的な強みではなく、具体的な行動で確認することが重要になります。事業計画を一緒に作った実績はあるか、月次でどんな資料をもとに何を話すのか。この2つを聞くだけで、事務所の姿勢はかなり明確になります。

変更を切り出しにくく、判断が先送りになる

長い付き合いや紹介の経緯があると、契約の見直しを切り出しにくいという声も多く聞きます。先代からの関係が続いているケースでは、なおさらです。ただ、先送りしている間にも、事業計画のない期は過ぎていきます。まず必要なのは、税理士を変えるかどうかの結論ではなく、自社がこれから何を求めるのかを言語化することです。求める役割を明確にしたうえで現在の顧問税理士に相談すれば、対応してもらえることも少なくありません。判断はその反応を見てからでも遅くはありません。

税理士に不満が生まれる構造的な原因

決算書や申告書など過去の数字を確定させる税務書類
決算・申告は「過去の確定」、事業計画は「未来の設計」

不満の多くは、税理士側の能力不足ではなく、役割の前提がずれていることから生まれます。構造を理解すると、選び方も伝え方も変わります。

求める役割のすり合わせがされていない

顧問契約の多くは、記帳・試算表・決算・申告といった業務を前提に結ばれています。経営者が「経営の相談に乗ってほしい」と考えていても、それが契約や料金に含まれていなければ、税理士側は求められていることに気づけません。期待している役割を言葉にして伝えていないことが、不満の最大の原因です。まずは「事業計画を一緒に作りたい」「銀行との交渉に同席してほしい」と具体的に依頼してみる。その反応こそが、最も確かな判断材料になります。

過去を見る仕事と未来をつくる仕事は別物

決算と申告は、確定した過去の数字を正確に整える仕事です。一方、事業計画や資金繰りは、これから起こることを設計する仕事であり、必要な知識も進め方もまったく異なります。振り返り、5年後の目標設定、課題の洗い出し、四半期への分解、毎月のモニタリング――ここまで踏み込むには、税務の知識に加えて経営に伴走する体制が要ります。この2つを同じ「税理士の仕事」として一括りにしていると、期待とのギャップが埋まりません。求めているのが過去の確定なのか、未来の設計なのかを分けて考えることが選び方の起点です。

資金調達の伴走は依頼しないと始まらない

3つ目は、資金調達への関与です。銀行は基本的に過去の決算状況を見て融資を判断します。だからこそ、決算を締めてから相談するのでは遅く、期中から着地を予測し、必要な資金を必要な時期に確保する準備が要ります。ところが融資支援は顧問契約の標準業務に含まれていないことも多く、依頼しなければ話題にも上がりません。金利上昇局面では借入の条件が業績に与える影響も大きくなります。資金調達に伴走してもらえるかは、必ず契約前に確認しておきたい項目です。

✅ 自己診断:あなたの会社はいくつ当てはまりますか?

  • 顧問料に何が含まれているかを書面で確認していない
  • 事業計画を一緒に作ったことがない
  • 月次で数字を見ながら議論する場がない
  • 銀行対応を相談したことがない
  • 決算の着地見込みを期中に聞いたことがない
  • 経営の相談をしたいが切り出せていない
  • 顧問税理士に何を頼めるのかを把握していない

3つ以上当てはまる場合、顧問契約が本来の価値を発揮していない可能性があります。

税理士の選び方|5つのチェックポイント

業績資料を見ながら経営について話し合う経営者と顧問税理士
「何をしてくれるか」を具体的な行動で確認する

税理士を選ぶときは、次の5点を具体的な質問として投げかけてください。抽象的な強みではなく、実際の行動と仕組みを確認するのがポイントです。

チェック1:事業計画を一緒に作ってくれるか

最も分かりやすい基準がこれです。「御社と一緒に事業計画を作った実績はありますか」と尋ねてみてください。数字の表を作るだけでなく、5年後の青写真から逆算して課題を洗い出し、四半期の行動計画まで落とし込めるかが確認したい点です。事業計画づくりは、その会社の強み・人材・給与水準・将来像に踏み込まなければ作れません。そこまで踏み込む姿勢があるかどうかで、経営のパートナーになれるかが決まります。

チェック2:資金調達・銀行対応に伴走するか

次に、融資と銀行対応です。融資の申込書類を作るだけでなく、いつ・いくら・どの金融機関から調達すべきかを一緒に設計してくれるかを確認します。銀行が何を見て評価しているのか、自社の決算がどう映るのかを説明できる税理士は、資金繰りの実務に通じています。金利が上がる局面では、借入をどう組むかが手元資金の厚みを左右します。融資支援の実績と、決算前の着地予測をどう扱っているかを聞いてみてください。

チェック3:月次でモニタリングする仕組みがあるか

計画は作って終わりでは意味がありません。毎月の実績と計画を突き合わせ、ズレの原因と次の一手を話し合う場があるかを確認します。試算表を郵送して終わりなのか、月次で面談の時間を取り、行動計画の進捗まで確認するのか。ここに大きな差が出ます。計画が絵に描いた餅で終わる最大の理由は、やるべきことがToDoまで区分されず、モニタリングの仕組みもないことにあります。月次の運用方法は必ず具体的に聞いてください。

チェック4:人と組織の話までできるか

事業計画を実行するのは人です。したがって、評価基準・育成基準・採用の強化方針まで一緒に考えられるかは重要な視点になります。数字の計画だけを立てても、それを担う人が育たなければ達成できません。給与水準をどう引き上げるか、どんな人材をいつ採用するか、昇進昇格の基準をどう定めるか。税務の枠を超えたこれらのテーマに踏み込めるかどうかが、成長フェーズの会社にとっては大きな違いになります。

チェック5:料金と対応範囲が明確か

最後に、料金と対応範囲です。顧問料に何が含まれ、何が別料金なのかが書面で明確になっているかを確認します。事業計画の策定支援、融資支援、月次面談、年末調整や各種届出などは、事務所によって標準業務か別途契約かが分かれます。ここが曖昧なまま契約すると、「頼んだつもりが範囲外だった」というすれ違いが起きます。誠実な事務所ほど、できることとできないことをはっきり伝えてくれます。※契約内容や料金体系は事務所ごとに異なります。必ず書面でご確認ください。

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実務ポイント|私たちが考える「任せられる税理士」の条件

事業計画と財務レポートをもとに議論する経営会議の様子
事業計画を作らないことは、事業の失敗を計画すること

ここからは、税理士法人を経営する立場として、私自身が持っている考えをお伝えします。同業に対して厳しい見方かもしれませんが、顧問先の経営者に向き合ううえで大切にしている基準です。

事業計画を作らないことは、失敗を計画すること

私は、事業計画を作らないということは、事業の失敗を計画することにほかならないと考えています。そのうえで申し上げたいのは、もし今お付き合いのある税理士が事業計画を一緒に作ってくれないとすれば、それは本当にあなたの会社のことを考えているのだろうか、という問いです。ただし、これは税理士に責任を押しつける話ではありません。税理士がいないから事業計画を作らないのではなく、経営者自身が事業計画を作ることにコミットする――従業員を幸せにしていく、その覚悟がまず必要だと思っています。そのうえで、伴走してくれる相手を選ぶ順番です。

事業計画は「振り返り→青写真→四半期→ToDo→毎月の確認」まで落とす

事業計画を作るとき、必ずしておかなければならないのは今年1年間の振り返りです。計画してよかったこと、計画したができなかったこと、計画していなかったがやらなければならなかったこと、想定外の課題――いろいろな角度から、この1年で会社が何に取り組んだのかを明確にします。そのうえで5年後の定量・定性目標と「なぜ達成しなければならないのか」を確認し、会社の規模・強み・給与水準・人材確保といった青写真を描きます。次にお金・成長・利益確保などの観点から課題を洗い出し、5年以内のどこで着手するかを決める。さらに1年の課題を四半期に分け、第1四半期はToDoといつやるかまで落とし込み、毎月モニタリングする。ここまでやって初めて行動計画は実践されます。ここまで一緒に走れるかが、税理士を見極める実質的な基準です。

借入は「保険料」――資金繰りに伴走できるか

資金繰りの相談を受けたとき、私たちが必ずお伝えしているのは「借りられるときに全力で借りてください」ということです。銀行取引の鉄則は、借りられるときにしっかり借りておくことにあります。たとえば5,000万円を借りて金利が2%なら年間100万円、月にすると8万円ほどのコスト増です。この金利はもしものときのための保険料だと考えていただきたいのです。コロナ禍では保証協会の制度により銀行が貸しやすい環境が整いましたが、業界特有の逆風で自社だけが一時的に苦しくなったとき、銀行が同じように貸してくれるとは限りません。この考え方を共有し、資金繰りに伴走してくれるかどうかも重要な判断軸です。

銀行の見方(実質借入)を説明できるか

「借入が多すぎる会社だと見られないか」と心配される経営者は多くいらっしゃいます。この点について、多くの金融機関は借入から預金を差し引いた差額を実質的な借入として見ています。たとえば借入1億円・預金0円の会社と、借入5億円・預金5億円の会社であれば、後者のほうが高く評価されることも珍しくありません。つまり、借入額の大きさだけで企業のバランスは判断されないということです。※金融機関ごとに評価基準は異なります。こうした銀行側の見方を、自社の数字に当てはめて説明してくれる税理士かどうか。ここが、決算書を作るだけの関係と、資金繰りのパートナーとの違いです。

ここまでが、税理士選びに共通する判断基準です。ここから先は、御社の現在の顧問契約の範囲と、いま経営で最も困っていることが分からないと、変更すべきか依頼の仕方を変えるだけで足りるのかは判断できません。多くの場合、依頼の仕方を変えるだけで解決することもあるためです。

税理士の選び方に関するよくある質問

税理士を選ぶときの基準は何ですか?

料金や規模よりも、事業計画を一緒に作るか、資金調達に伴走するか、月次でモニタリングする仕組みがあるかの3点を優先して確認してください。過去を確定させる業務だけでなく、未来を設計する支援まで含まれているかが最大の分かれ目です。

顧問税理士を変えるべきか迷っています。判断基準はありますか?

いきなり結論を出す前に、「事業計画を一緒に作りたい」「銀行対応に同席してほしい」と具体的に依頼してみることをおすすめします。その反応が最も確かな判断材料になります。対応してもらえるなら、変更せずに関係を作り直せるケースも多くあります。

事業計画は税理士に作ってもらうものですか?

いいえ、作るのは経営者自身です。税理士の役割は、振り返りの整理、5年後の青写真の言語化、課題の洗い出し、四半期への分解、毎月のモニタリングまで伴走することにあります。丸投げでは実行されない計画になってしまいます。

融資に強い税理士かどうかはどう見極めますか?

「銀行は何を見て融資を判断していると考えますか」と質問してみてください。過去の決算内容や実質借入(借入−預金)の見方を自社の数字で説明できるかで、実務経験の深さが分かります。決算前の着地予測をどう扱っているかも有効な質問です。

まとめ|税理士は「未来を一緒に作れるか」で選ぶ

税理士の選び方は、①事業計画を一緒に作るか ②資金調達・銀行対応に伴走するか ③月次でモニタリングする仕組みがあるか ④人と組織の話までできるか ⑤料金と対応範囲が明確かの5点で見極められます。決算と申告は過去を確定させる仕事、事業計画と資金繰りは未来をつくる仕事であり、必要なのは後者に踏み込めるパートナーです。事業計画を作らないことは、事業の失敗を計画すること。まずは経営者自身が計画づくりにコミットし、そのうえで伴走できる相手を選ぶ――この順番を意識するだけで、税理士との関係は大きく変わります。

事業計画づくりに伴走するパートナーとして握手する経営者と税理士
過去の確定だけでなく、未来の設計まで任せられる相手を選ぶ

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監修者 Actvision税理士法人 代表社員税理士 塩谷宣弘

監修者

塩谷 宣弘|Actvision税理士法人 代表社員税理士/Actvision Consulting株式会社

28歳で税理士試験に合格し、KPMG税理士法人でM&Aタックスアドバイザリー・国際税務に従事。32歳でActvisionグループを創業し、銀行融資支援に特化して開業5年で従業員35名規模の税理士法人へと成長させる。自社の組織課題と再建を経験し、マネジメント改革で離職率・組織力・営業力を回復させた実績を持つ。現在は「中小企業経営者の唯一無二のパートナーになる」を理念に、理念経営・ビジネスモデル策定・経営管理・人事戦略・財務戦略を横断する中小企業特化のコンサルティングを提供している。

最終更新:2026年8月