税理士法人に経営コンサルを頼むなら、いまの顧問税理士も変えなければならない――そう思い込んで、相談そのものをためらっている経営者は少なくありません。実際には、顧問税理士はそのままに、経営コンサルだけを別の税理士法人へ依頼する形が可能です。本記事では、その契約の仕組みと役割の違い、依頼する前に確認しておきたい点を整理します。

この記事の結論:経営コンサルを依頼するのに、顧問税理士を変える必要はありません。税務顧問(記帳・申告)と経営コンサル(事業計画・組織・資金の設計)は別の契約であり、別の役割だからです。当法人でも、税務顧問とは切り離したコンサル単体の契約を20社以上お受けしています。今の先生との関係を保ったまま、経営の相談相手だけを増やすという選択ができます。

「税理士を変えないと頼めない」という思い込み

顧問税理士を変えずに経営コンサルだけ頼めるか思案する中小企業の経営者
相談が止まる最大の理由は、料金でも内容でもない

経営コンサルの相談が止まる最大の理由は、料金でも内容でもありません。「今の税理士との関係をどうするのか」という気まずさです。まずは、多くの経営者が抱えている迷いを整理します。

長い付き合いの先生を、切りたいわけではない

先代からの付き合い、紹介してくれた人の顔、日々の申告をきちんとやってくれている事実。今の顧問税理士に不満があるわけではないという経営者は非常に多くいらっしゃいます。それでも「経営のことを一緒に考えてくれる相手が欲しい」という気持ちは別に存在します。この2つは矛盾しません。税理士を変えたいのではなく、相談できる相手を増やしたい――これが多くの経営者の本音です。

「税理士法人に頼む=顧問も移す」と思ってしまう

税理士法人が提供するサービスというと、記帳・試算表・決算・申告という税務顧問の一式が思い浮かびます。そのため「コンサルを頼む=顧問契約ごと移す」と受け取られがちです。しかし実際には、経営コンサルは税務顧問とは別の契約として結ぶことができます。契約が別であれば、今の顧問税理士との関係はそのまま維持できます。この点が知られていないために、相談の入口で止まってしまうケースが多いのです。

今の先生に知られたら気まずいのではないか

3つ目が、心理的にいちばん重い部分です。「他の税理士に相談していると知られたら、関係が悪くなるのではないか」という懸念です。結論から言えば、相談の段階で今の顧問税理士にお伝えいただく必要はありません。経営の相談をどこにするかは、経営者の自由です。実際にコンサル契約に進む場合も、税務顧問の契約には手を触れないため、先方の業務が減ることはありません。

なぜこの誤解が生まれるのか

顧問契約の範囲と経営コンサルの契約範囲を書面で確認する場面
「税務顧問の付帯サービス」という業界の慣習が誤解を生んでいる

この誤解には、業界側の事情が関係しています。読者の思い込みというより、提供する側の慣習が原因です。

多くの事務所で、経営支援が「おまけ」だから

多くの税理士事務所のサービスは「税務顧問+財務アドバイス」までです。経営の相談に乗ることはあっても、それは税務顧問に付帯するサービスという位置づけになっています。付帯である以上、顧問契約がなければ受けられません。だから「コンサルだけ頼む」という発想自体が生まれにくいのです。この構造が、そのまま経営者側の思い込みになっています。

役割の違いが説明されてこなかった

税務顧問と経営コンサルは、そもそも仕事の性質が違います。決算と申告は「確定した過去」を正確に整える仕事事業計画や資金繰りは「これから起きること」を設計する仕事です。必要な知識も進め方も異なります。この違いが説明されてこなかったため、両方を「税理士の仕事」と一括りに捉えてしまい、片方を頼むならもう片方も、という発想になってしまいます。

「二重に払うことになる」と誤解される

費用面の誤解もあります。顧問料とコンサル料を両方払うのは無駄ではないか、という懸念です。しかし両者は同じ仕事に二重に払っているのではなく、別の仕事にそれぞれ払っているのが実態です。記帳と申告は今の先生が、経営の設計と月次の意思決定支援は別の相手が担う。役割が重複していなければ、支払いも重複しません。重要なのは「何にいくら払っているか」を、契約範囲として書面で把握できているかです。

✅ 自己診断:あなたの会社はいくつ当てはまりますか?

  • 今の顧問税理士に大きな不満はないが、経営の相談はできていない
  • 事業計画を一緒に作ったことがない
  • 月次で数字を見ながら次の一手を議論する場がない
  • 顧問料に何が含まれているかを書面で確認していない
  • 経営の相談先を探したいが、今の先生に悪い気がして動けていない
  • 幹部の給与や採用の可否を、数字の裏付けなく決めている
  • 銀行対応を相談できる相手がいない

3つ以上当てはまる場合、顧問契約を変えなくても解決できる課題が残っている可能性があります。

顧問はそのまま、コンサルだけ依頼するという形

顧問税理士はそのままに経営コンサルだけを別の税理士法人へ依頼する相談の場面
契約を分ければ、今の関係を壊さずに相談相手を増やせる

実際の形はシンプルです。税務顧問は今の先生、経営コンサルは別の税理士法人という分担にするだけです。役割を整理すると、次のようになります。

税務顧問(今の先生)経営コンサル(別契約)
扱う時間軸確定した過去これからの未来
主な仕事記帳・試算表・決算・申告事業計画/人事評価制度/理念の浸透/業績管理(PDCA)
頻度事務所により異なる毎月
成果物決算書・申告書計画と、実行された行動
契約そのまま継続新規に締結

今の顧問契約には一切手を触れない

コンサル契約は税務顧問とは独立しているため、今の顧問契約の内容・料金・担当者は何も変わりません。解約の連絡も、引き継ぎも発生しません。今の先生の業務量が減るわけでもないため、実務上の影響もありません。経営者にとっては「相談できる相手が一人増える」だけです。

決算書は共有していただく必要がある

ひとつだけお願いする点があります。決算書と試算表の共有です。幹部にいくら払えるか、今年あと何人採用できるか、値上げすべきか――こうした問いは、数字を見なければ答えが出ません。ここは正直に申し上げます。ただし、入手先は今の顧問税理士ではなく経営者ご自身で構いませんし、内容は当然ながら秘密厳守です。今の先生に連絡が行くことはありません。

今の先生を否定するものではない

誤解のないようにお伝えしますが、この形は今の顧問税理士を否定するものではありません。記帳と申告を正確に、期限内に仕上げることは、それ自体が専門性の要る重要な仕事です。私たちが担うのは、そこに含まれていない領域です。どちらが優れているかではなく、役割が違うというだけです。

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実務ポイント|私たちがコンサルを単体で受けている理由

外部CFOとして月次で経営数値と次の一手を議論する会議の場面
経営支援そのものに対価をいただき、責任を負う

ここからは、私たちがなぜこの形を取っているのかをお伝えします。税務顧問の「おまけ」ではなく、経営支援そのものに責任を負うという考え方が出発点です。

経営コンサルを「単体受任」している

私たちは経営コンサルティングを、税務顧問とは切り離した独立の契約として受任しています。コンサル単体での契約を20社以上のお客様と結んでいます。「税務のついで」ではなく、経営支援そのものに対価をいただき、責任を負う――ここが決定的な違いです。顧問税理士が他の事務所であっても、経営の伴走はできます。実際、そうした形でお付き合いしている会社があります。

税理士法人だからこそ、数字を読み解ける

経営コンサルを名乗る会社は数多くありますが、決算書を正しく読み解けるかどうかは別の話です。私たちは税理士法人ですので、粗利の構造、人件費の内訳、借入と預金のバランス、資金の回転を、その場で判断できます。「幹部にいくら払えるか」「あと何人採用できるか」といった問いに、感覚ではなく計算で答えられるのは、この専門性があるからです。顧問契約がなくても、決算書さえ共有いただければ同じ議論ができます。

毎月会える関係だけをお受けしている

私たちには、あえて受けないと決めていることがあります。3か月に1回・半年に1回といった契約はお受けしていません。数か月に一度しか会えなければ、本当の相談相手にはなれないからです。毎月、試算表を挟んで「計画とどれだけズレたか」「次の四半期で何に着手するか」を1時間ほど議論します。決めたことが翌月に検証される仕組みがあって初めて、計画は行動に変わります。この関与の深さが、税務顧問の付帯サービスとは決定的に違う点です。

顧問先200社を支える体制が母体にある

コンサルティングの土台には、顧問先200社を支える税理士法人としての実務があります。事業計画の策定支援は延べ70社。中小企業がどこでつまずき、どんな順番で手を打てば動き出すのかを、数多くの現場で見てきました。外部CFOとして、数字の先にある「人と組織」まで踏み込むのが私たちの役割です。※支援の成果は会社の状況により異なり、効果を保証するものではありません。

ここまでが、契約の形についての一般的な整理です。ここから先は、御社の決算書と、いまの顧問契約に何が含まれているかが分からないと、コンサルを別途お願いすべきなのか、今の先生に依頼の仕方を変えるだけで足りるのかは判断できません。実際、依頼の仕方を変えるだけで解決するケースもあります。まずはそこの切り分けからで構いません。

よくある質問

顧問税理士を変える必要はありますか?

ありません。経営コンサルは税務顧問とは別の契約です。今の顧問契約の内容・料金・担当者は何も変わらず、解約や引き継ぎも発生しません。相談相手が一人増えるだけとお考えください。

今の税理士に知られたくないのですが、大丈夫ですか?

お伝えいただく必要はありません。経営の相談をどこにするかは経営者の自由です。決算書は今の先生からではなく、経営者ご自身からご共有ください。当法人から今の顧問税理士へ連絡することはありません。

顧問料とコンサル料が二重になりませんか?

同じ仕事に二重に払うのではなく、別の仕事にそれぞれ払う形になります。記帳・申告は今の先生、経営の設計と月次の意思決定支援は別の相手という分担です。まずは今の顧問料に何が含まれているかを書面でご確認ください。

決算書を見せる必要はありますか?

はい、決算書と試算表の共有は必要です。幹部の給与や採用の可否といった問いは、数字がなければ答えが出ないためです。内容は秘密厳守で扱い、外部に出ることはありません。

相談したら契約させられませんか?

いいえ。無料経営診断は30分で現状を整理するだけで、強引な勧誘は一切いたしません。「今の先生に依頼の仕方を変えるだけで足ります」とお伝えして終わることもあります。

まとめ|相談相手を増やすという選択

経営コンサルを依頼するのに、顧問税理士を変える必要はありません。税務顧問は「確定した過去」を整える仕事、経営コンサルは「これからの未来」を設計する仕事であり、契約も役割も別だからです。当法人でも税務顧問と切り離したコンサル単体の契約を20社以上お受けしています。今の先生との関係を壊さずに、経営の相談相手だけを増やすことができます。まずは「自社に足りないのは税務の支援なのか、経営の設計なのか」を切り分けるところから始めてみてはいかがでしょうか。

顧問税理士との関係を保ったまま経営コンサルのパートナーを得た中小企業の経営者
関係を壊さずに、経営の伴走者を得るという選択

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監修者 Actvision税理士法人 代表社員税理士 塩谷宣弘

監修者

塩谷 宣弘(しおたに のぶひろ)|Actvision税理士法人 代表社員税理士(近畿税理士会所属)/Actvision Consulting株式会社 代表

28歳で税理士試験に合格。KPMG税理士法人にてM&Aタックスアドバイザリーグループに2年、インターナショナルコーポレートタックス部に2年在籍し、M&A税務と国際税務に従事。32歳でActvisionグループを創業し、銀行融資支援に特化して開業5年で従業員35名規模の税理士法人へと成長させる。融資支援歴12年。船井総合研究所の創業融資セミナーで講師を務めるほか、信用金庫の勉強会で創業融資の実態を講演。自社の組織課題と再建を経験し、マネジメント改革で離職率・組織力・営業力を回復させた実績を持つ。現在は「中小企業経営者の唯一無二のパートナーになる」を理念に、顧問先200社を支える税理士法人を母体として、2年で20社以上のコンサルティング契約・延べ70社の事業計画策定に携わり、理念経営・ビジネスモデル策定・経営管理・人事戦略・財務戦略を横断する中小企業特化のコンサルティングを提供している。(実績数値は2026年8月時点)

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最終更新:2026年8月