「うちのマネージャーが期待通り機能しない」――この悩みを抱える中小企業経営者は本当に多くいらっしゃいます。しかし、原因をマネージャー個人の能力に帰着させても解決しません。本記事では、私たちが顧問の現場で見えてきたマネージャーが育たない本当の理由と、中堅成長企業に必要なマネジメント教育の進め方を税理士視点で解説します。

この記事の結論:マネージャーが育たない原因は、本人の資質ではなくマネジメントを教える仕組みが社内にないことです。多くの会社はプレイヤーとして優秀な人をそのまま管理職にし、あとは本人任せにしています。必要なのは「①管理職の役割を文書で定義する ②マネジメントを体系的に学ぶ場をつくる ③プレイヤー業務の比率を下げる」の3点。育たないのではなく、育てていないだけというケースがほとんどです。

中小企業でマネージャーが育たない悩み

マネジメント課題を抱える中小企業の経営者
マネージャー不全の悩みは中小企業に普遍的

「上司が上司の仕事をしていない」とよく言われる

経営者から最も多く聞く悩みが「マネージャーが管理業務をやっていない」「部下を育成できていない」というものです。しかしこれを個人の能力問題として叱責しても、状況は改善しません。本当の問題はもっと根本にあります。

マネージャーが現場のプレイヤーから抜け出せない

中堅企業ではマネージャー昇進後も、本人がプレイヤー業務に時間の8割以上を割いてしまう状況がよく見られます。これは本人の意思や能力の問題ではなく、「マネージャーとは何をする人か」が組織で言語化されていないことが原因です。

育成のサイクルが回らない

マネージャーが部下を育てられないと、現場のプレイヤー層も育ちません。育成の連鎖が止まると、組織全体の人的資本が膨らまず、年商10億円の壁が突破できなくなるという構造的な問題に発展します。

マネージャーが育たない本当の原因

マネジメントの本質的原因を考える経営者
本当の原因は「教育をしていない」シンプルな事実

そもそもマネジメント教育を受けたことがない

原因は驚くほどシンプルです。マネージャーに昇格したメンバーが、マネジメントについて教育を受けたことがない。これが中小企業のほぼ全てに当てはまる現実です。プレイヤーとして優秀だった人をマネージャーに任命し、あとは現場で勝手に学んでくれ、というスタイルでは育つはずがありません。

育成方法が言語化されていない

部下を育成するにあたって、自社ではどのように育成すべきかが明確になっているでしょうか。育成のステップ、評価基準、面談の頻度・内容――これらが文書化されていない会社で、マネージャーが自然に部下を育てられるはずがありません。

モチベーション管理の指針がない

部下が落ち込んでいる時、叱るのか・褒めるのか・話を聞くのか。会社としての指針がないと、マネージャーは自分の経験則と個人の性格に頼るしかなく、結果として組織として一貫性のない育成になります。

✅ 自己診断:あなたの会社はいくつ当てはまりますか?

  • プレイヤーとして優秀な人をそのまま管理職にしている
  • マネジメントを体系的に教えていない
  • 管理職の役割を文書で定義していない
  • 管理職がプレイヤー業務を8割以上抱えている
  • 管理職向けの研修に予算を割いていない
  • 評価基準にマネジメント成果が入っていない
  • 育たない原因を本人の資質だと考えている

3つ以上当てはまる場合、育たないのは個人の資質ではなく、教育の仕組みがないことが原因の可能性があります。

監修税理士 塩谷宣弘の見解

顧問先を見ていて「上司が上司としての仕事をしていない」「部下を育成できない」というご相談をよくいただきます。ただ原因はかなりシンプルです。そもそもマネジメントに対する教育をしたことがない。中小企業のほとんどすべてが、ここに当てはまります。試しに確認してみてください。部下をどのように育成すべきかが明確になっていますか。部下が落ち込んでいるときのモチベーションの上げ方を決めていますか。モチベーションが保てないとき、叱るのか、褒めるのか、よく話を聞くのか、決めていますか。育成の方法を決めていないのですから、マネジメントを仕様として渡す方法がありません。

▶ 関連コラム:人が伸びる設計|中小企業の人材育成と勉強会の作り方(教える設計そのものをどう作るか)

マネジメント教育を始める3つの原則

セミナーでマネジメントを学ぶ場面
教育の仕組みを作ることが組織再生の第一歩
  1. 「マネジメントとは何か」を言語化する(会社としての定義を先に決める)
  2. 育成プロセスを標準化する(誰が見ても同じ手順で育てられる形にする)
  3. 外部研修と内部実践を組み合わせる(学んだことを現場で回す)

原則1:「マネジメントとは何か」を言語化する

マネージャー昇格時の最初の仕事は、「自社のマネージャーとはどんな役割か」を文書として渡すことです。プレイヤー業務との時間配分、最低限担うべき責任範囲、育成・評価・モチベーション管理の基本動作――これらを具体的に明文化してください。

原則2:育成プロセスを標準化する

部下の育成方法を社内で揃えるため、「うちの会社では、部下が落ち込んだらこう接する」「目標達成にはこの手順を取る」という指針を作ってください。マネージャーごとに育成スタイルがバラバラだと、メンバー側に不公平感が生じます。

原則3:外部研修と内部実践を組み合わせる

外部のマネジメント研修で基礎を学び、社内で実践するという「学んで→使う」のサイクルを回します。研修は受けて終わりではなく、現場での実践と振り返りまでセットで設計することで初めて定着します。

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中小企業経営者のための実務ポイント

社内でマネジメント研修を行う場面
教育・実践・振り返りのサイクルを仕組みにする

マネージャー就任時の「就任研修」を必須化する

マネージャー昇格時に、1〜2日の集中研修を必ず受ける制度を作ってください。内容は自社のマネージャー像、評価制度、育成プロセス、1on1の進め方、モチベーション管理の指針など。研修を経ずに昇格させない仕組みが、組織のスタンダードを統一します。

四半期ごとのマネジメント振り返り会

マネージャー就任後も、四半期に1度はマネージャー同士が集まり、育成事例・困りごと・成功体験を共有する場を設けます。経営者が同席して方針を再確認することで、現場でのブレを防げます。

(出典)中小企業の人材育成をめぐる動向は 中小企業庁「中小企業白書」で、産業別の入職率・離職率は 厚生労働省「雇用動向調査 結果の概況」で確認できます。

監修税理士 塩谷宣弘の見解

ですから私がお伝えしているのは、とても単純な提案です。そもそもマネジメント教育をする、というところからスタートしてはいかがでしょうか。マネージャーが育たないのは、その人の資質の問題として語られがちですが、多くの場合は会社が教えていないだけです。教えていないことを「できていない」と評価するのは、順番が逆だと思っています。

▶ 関連コラム:仕事で無理させない|中小企業の人材定着と業務割り振り(無理をさせないための、実力に応じた業務の割り振り)

経営者自身が「マネジメントの教科書」を提示する

担当の税理士として、私たちはマネジメント教育に取り組む経営者の財務改善スピードが速いことを実感しています。経営者が「うちの会社のマネジメントとはこういうものだ」を本気で示すことが、マネージャーの育成に直結します。完璧でなくてよく、現時点での考え方を文書化してマネージャーに渡すだけでも、組織は大きく変わります。

私たちは顧問先の経営者と毎月、試算表を挟んで「計画とどれだけズレたか」「次の四半期で何に着手するか」を1時間ほど議論しています。数字の報告を受ける時間ではなく、次の一手を決める時間として使っていただくためです。決算のときだけ数字を見る関係では、打てる手はどうしても限られます。

ここまでが、マネージャー育成に共通する考え方です。ここから先は、御社の組織図と管理職一人あたりの粗利負担が分からないと、教育に割ける時間と人数を設計できません。教育時間の捻出は、粗利と人員配置の問題でもあるためです。

マネジメント教育に関するよくある質問

マネジメント研修の費用はどれくらいかかりますか?

外部研修なら1人あたり5万円〜30万円程度が相場です。社内研修ベースなら直接コストは抑えられますが、設計・運営の工数がかかります。中堅成長フェーズでは、外部のフォーマットを購入して社内向けにカスタマイズするのが費用対効果の高い選択肢です。

マネージャーに不向きな人もいますか?

はい、適性は確かに存在します。ただ、適性以前に「教育を受けていない」が原因のケースが大半なので、まずは教育機会を提供してから判断するのが望ましいです。教育後も明らかに難しい場合は、専門職としてのキャリアパスを別途用意する判断も必要です。

マネジメント教育はどこから始めればいい?

まず「自社のマネージャーは何をする人か」の言語化から始めてください。これがないまま研修を導入しても、現場で活用されません。役割定義 → 育成プロセス標準化 → 研修導入の順番が王道です。

経営者自身もマネジメントを学び直すべきですか?

はい、可能であれば経営者自身が定期的にマネジメント関連の書籍や研修に触れてください。経営者のマネジメント観がアップデートされないと、組織の標準も古いままになります。

まとめ|教育から始めるマネージャー育成

マネージャーが育たない理由は、能力でも意欲でもなく、マネジメント教育を受けていないというシンプルな事実に集約されます。当たり前のようですが、ここから手を打っていない会社が圧倒的多数です。役割定義 → 育成プロセス標準化 → 就任研修 → 振り返り会という仕組みを作るだけで、組織の育成サイクルは確実に回り始めます。マネージャーの育成は、会社の成長スピードそのものを規定する経営テーマです。

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監修者 Actvision税理士法人 代表社員税理士 塩谷宣弘

監修者

塩谷 宣弘(しおたに のぶひろ)|Actvision税理士法人 代表社員税理士(近畿税理士会所属)/Actvision Consulting株式会社 代表

28歳で税理士試験に合格。KPMG税理士法人にてM&Aタックスアドバイザリーグループに2年、インターナショナルコーポレートタックス部に2年在籍し、M&A税務と国際税務に従事。32歳でActvisionグループを創業し、銀行融資支援に特化して開業5年で従業員35名規模の税理士法人へと成長させる。融資支援歴12年。船井総合研究所の創業融資セミナーで講師を務めるほか、信用金庫の勉強会で創業融資の実態を講演。自社の組織課題と再建を経験し、マネジメント改革で離職率・組織力・営業力を回復させた実績を持つ。現在は「中小企業経営者の唯一無二のパートナーになる」を理念に、顧問先200社を支える税理士法人を母体として、2年で20社以上のコンサルティング契約・延べ70社の事業計画策定に携わり、理念経営・ビジネスモデル策定・経営管理・人事戦略・財務戦略を横断する中小企業特化のコンサルティングを提供している。(実績数値は2026年8月時点)

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最終更新:2026年8月