「うちは事業計画を作っていないが、なんとなく回っている」――こんな中小企業経営者は実は少なくありません。しかし事業計画を作らないことは、事業の失敗を計画していることと同義です。本記事では、中堅成長企業が必ず取り組むべき事業計画の作り方と、形だけの計画で終わらせないための実践手順を税理士視点で解説します。

この記事の結論:事業計画を作らないということは、事業の失敗を計画することにほかなりません。手順は「①この1年を振り返る ②5年後の目標と理由を定める ③会社の青写真を描く ④課題を洗い出し着手時期を決める ⑤1年分を四半期に分ける ⑥第1四半期はToDoと実施日まで落とす ⑦毎月モニタリングする」。計画が絵に描いた餅で終わる原因は、ToDoまで区分されず、毎月確認する場がないことにあります。

事業計画を立てない中小企業が抱える悩み

事業計画について悩む中小企業経営者
計画なしでは行き当たりばったりの経営になりやすい

場当たり的な経営判断が続く

事業計画がない会社では、日々の意思決定がその場の感覚と勢いで進む傾向があります。年商1〜10億円規模の中堅企業ではスピード感が武器になる一方、長期的な方向性を欠いた経営は中長期で大きな機会損失を生みます。

5年後の自社像が言語化されていない

「5年後どんな会社になっていたいか」を経営者自身が言語化できていないケースは多くあります。青写真がない会社では、人材採用も投資も基準が定まらないため、結果として組織はバラバラの方向を向きます。

計画を作っても形骸化する

「事業計画は作ったが、結局棚に置いたまま」――この経験を持つ経営者も多いはずです。計画が形骸化する最大の原因は、ToDoレベルまで落とし込まれていないことにあります。

事業計画づくりで押さえるべき手順

経営計画を整理する場面
振り返り → 青写真 → 課題分解の順番が王道

ステップ1:今年1年の振り返りから始める

事業計画作成の出発点は、必ず今年1年の振り返りです。計画通り進んで良かったこと、計画したができなかったこと、計画になかったがやるべきだったこと、想定外の課題――この4つの角度から、自社が1年間でどう動いたかを明確にします。

ステップ2:5年後の定量・定性目標と「なぜ」を言語化

次に、5年後の定量目標(売上・利益・社員数など)と定性目標(事業領域・組織文化など)を設定します。「ただ儲かるだけではなく、なぜそこに到達する必要があるか」を言語化することで、計画にエネルギーが宿ります。

ステップ3:会社の青写真を磨く

5年後の規模、強み、給与水準、人材確保の方針、継続的強みをどう磨くか――大枠の青写真を丁寧に描きます。この青写真が、その後のすべての判断軸になります。

✅ 自己診断:あなたの会社はいくつ当てはまりますか?

  • 今期の数値目標を数字で言えない
  • 5年後の会社の姿を言語化していない
  • 昨年の振り返りを文書でまとめていない
  • 課題を四半期ごとに分けていない
  • 計画の進捗を毎月確認する場がない
  • 計画と評価基準がつながっていない
  • 計画を作っても実行されずに終わっている

3つ以上当てはまる場合、事業計画が「作って終わり」になっている可能性があります。

監修税理士 塩谷宣弘の見解

事業計画を作るとき、私が最初にお願いするのは数字ではなくこの1年の振り返りです。①計画して良かったこと ②計画したができなかったこと ③計画していなかったが、やらなければならなかったこと ④想定外の課題。この4つを洗い出して、会社がこの1年どんなことに取り組んだのかを明確にする。ここを飛ばして数字だけ作った計画は、たいてい動きません。そのうえで5年後の目標を置き、「なぜそれを達成しなければならないのか」まで言葉にしていきます。ただ儲かるからではなく、それを達成すると何が起こるのか、というところまでです。

▶ 関連コラム:社長の給料の決め方|会社に残す額(来期計画がないと、社長の報酬も根拠づけて決められない)

計画を実行に落とし込む3つの原則

経営会議で計画を議論する場面
四半期分解 → ToDo化 → モニタリングが実行のカギ
  1. 課題を複数の観点で分類する(お金・感謝・成長・利益確保など)
  2. 1年分を四半期ごとに分け、第一四半期はToDoまで落とし込む(いつやるかまで決める)
  3. 毎月モニタリングし、日報で継続チェックする(仕組みとして入れてしまう)

原則1:課題をお金・感謝・成長・利益の観点で分類

5年後の目標達成に必要な課題を、お金の観点・感謝の観点・成長の観点・利益確保の観点など多面的に整理します。そして「この課題は5年以内のどこで着手するか」までタイムラインに落とし込みます。

原則2:1年分を四半期ごとに分け、第一四半期はToDoへ

1年間の課題を四半期ごとに振り分け、特に第一四半期の課題はToDoレベルまで落とし込みます。「いつ・誰が・何をするか」が決まっていない計画は、必ず形骸化します。

原則3:毎月モニタリングと日報チェック

立てたToDoは毎月モニタリングし、日報レベルでも継続的にチェックする仕組みを入れることが、計画を絵に描いた餅にしないコツです。日報で「今日の継続事項を丸×でチェックする」だけでも、実行精度は大きく上がります。

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中小企業経営者のための実務ポイント

事業計画を社内に共有する場面
評価・育成基準とセットで初めて計画は機能する

育成基準・採用強化基準と連動させる

会社の青写真に沿って人材を育成するための育成基準・採用強化基準を明確に策定します。事業計画は「数字の計画」だけでなく、「人の計画」とセットで初めて機能します。

評価基準と昇進昇格基準を整える

事業計画と必ずセットになるのは評価基準です。評価基準に沿った人材育成、評価基準に沿った昇進昇格――これが感情を伴って組織に浸透することで、計画は確実に実行されます。感情を一定整理した上で育成し、必ずそこにたどり着かせる強い覚悟が経営者には求められます。

(出典)業種別・規模別の労働生産性など、中小企業の経営指標は 中小企業庁「中小企業白書」で、資金調達や設備投資の動向は 日本政策金融公庫「調査・研究」で確認できます。5年後の目標を置くときの外部の目線として使えます。

監修税理士 塩谷宣弘の見解

計画が絵に描いた餅になる原因は、ほぼ一つです。ToDoが明確に区分・管理されていないこと。第一四半期の課題は「いつ、誰が、何をするか」まで落とし込み、日報で毎日○×をつけるなど、仕組みとして入れてしまう必要があります。そこまでやって、毎月モニタリングする。私がお伝えしているのは、いつもこの一点です。事業計画を作らないということは、事業の失敗を計画することに他なりません。

▶ 関連コラム:銀行が見るポイント|実質借入と債務償還年数(計画で確保すべき利益額は、銀行評価から逆算できる)

経営者自身が計画にコミットする

事業計画を作らないことは事業の失敗を計画することと同義です。もし今の付き合いの税理士が事業計画を一緒に作ってくれないとすれば、本当にあなたの会社のことを考えているのか、見直す価値があります。担当税理士の有無に関係なく、経営者自身が事業計画を作ることにコミットし、従業員を幸せにする覚悟が出発点になります。

ここまでが、事業計画づくりに共通する手順です。ここから先は、御社の過去3期の実績と現在の課題が分からないと、5年後の目標として何を置くべきかを一緒に決めることはできません。計画は、現在地が正確に分かって初めて意味を持つためです。

事業計画に関するよくある質問

事業計画は何年分作るべき?

中小企業では5年計画+1年詳細計画が現実的なバランスです。5年の青写真と1年の具体的アクションを連動させることで、長期視点と短期実行性を両立できます。

事業計画書は税理士に作ってもらうもの?

計画の本体は経営者が作り、財務・税務面のサポートを税理士が担うのが理想的な分担です。税理士が一緒に作ってくれないなら、顧問契約の見直しを検討する価値があります。

計画通りに進まないときはどうする?

毎月のモニタリングで「計画通りでない」事実を早期に発見し、四半期単位で軌道修正することが基本です。年1回しか見直さない計画では、変化の早い市場についていけません。

事業計画と経営計画は違う?

厳密な区別はなく、ほぼ同義で使われます。事業の数値計画+行動計画+人材計画を統合したものが事業計画/経営計画です。

まとめ|事業計画を作らないことは失敗を計画すること

事業計画は中小企業にとって、5年後の会社像を実現するための羅針盤です。1年の振り返り → 5年青写真 → 課題分解 → 四半期化 → ToDo化 → 月次モニタリングという流れを回すことで、計画は実行に変わります。事業計画を作らないことは、事業の失敗を計画していることと同じ。経営者自身がコミットし、評価・育成基準まで含めて整えることで、従業員を幸せにする経営が実現します。

事業計画の実行で成果を出す場面
計画 → 実行 → 振り返りのサイクルが会社を強くする

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監修者 Actvision税理士法人 代表社員税理士 塩谷宣弘

監修者

塩谷 宣弘(しおたに のぶひろ)|Actvision税理士法人 代表社員税理士(近畿税理士会所属)/Actvision Consulting株式会社 代表

28歳で税理士試験に合格。KPMG税理士法人にてM&Aタックスアドバイザリーグループに2年、インターナショナルコーポレートタックス部に2年在籍し、M&A税務と国際税務に従事。32歳でActvisionグループを創業し、銀行融資支援に特化して開業5年で従業員35名規模の税理士法人へと成長させる。融資支援歴12年。船井総合研究所の創業融資セミナーで講師を務めるほか、信用金庫の勉強会で創業融資の実態を講演。自社の組織課題と再建を経験し、マネジメント改革で離職率・組織力・営業力を回復させた実績を持つ。現在は「中小企業経営者の唯一無二のパートナーになる」を理念に、顧問先200社を支える税理士法人を母体として、2年で20社以上のコンサルティング契約・延べ70社の事業計画策定に携わり、理念経営・ビジネスモデル策定・経営管理・人事戦略・財務戦略を横断する中小企業特化のコンサルティングを提供している。(実績数値は2026年8月時点)

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最終更新:2026年8月