「採用してもすぐ辞める」「定着しない」――この悩みは、中小企業経営者の永遠の課題です。私自身も顧問先支援の現場で日々向き合っていますが、現時点でたどり着いた答えは「柔軟性を持つこと」です。本記事では、人が辞めない会社をつくるための本質的な考え方と、Z世代を含む若手定着の実務ポイントを税理士視点で解説します。
Contents
中小企業経営者が「人が辞める」で抱える悩み

過去の自分の経験が基準になっている
多くの経営者は、自身が過酷な環境で力をつけてきた経験を持っています。だからこそ「勉強しない・残業を避ける」という若手の姿勢が刺さって見えるのです。しかしこの基準で若手を測ると、「やる気がない・実力がない」という判定で退職を促してしまう負の連鎖が生まれます。
残業=努力という古い前提
「残業しない=やる気がない」と直結する経営者もいますが、ここに大きな前提誤りがあります。残業で何をしているかを冷静に見ると、クリエイティブな仕事ではなく作業をこなしているケースが大半です。
仕事を「楽しい」と感じさせる関わりができていない
残業しない・勉強しないという行動の裏には、「仕事が生活やYouTubeを見ることより楽しくない・大切ではない」という現実があります。これは本人の問題ではなく、会社・上司側の関わり方の問題でもあります。
人が辞める本当の原因

仕事の楽しさを伝える機会がない
仕事を楽しいと感じてもらうには、日々仕事の楽しさを教え、伝え、一緒に喜ぶ関わりが必要です。これが日常的になされていないと、メンバーの心の中に「仕事って楽しいかも」という感覚は生まれません。
クリエイティブな仕事が任されていない
本気でメンバーを伸ばそうと考えたとき、残業で作業をさせるのではなく、勤務時間内にクリエイティブな仕事を渡すという発想転換が必要です。作業の経験も否定はしませんが、それだけでは仕事への愛着は育ちません。
勤務時間内のクオリティが正しく評価されない
残業しない人は、本当にクオリティを出していないのでしょうか。実は勤務時間内にしっかりクオリティを出しているメンバーは数多くいるのが現実です。残業時間という旧来の指標で評価し続けると、本当に優秀な人材を見落とすことになります。
人が辞めない会社をつくる3つの原則

原則1:経営者が柔軟性を持つ
過去の自分基準を一度脇に置き、今のメンバーが感じている価値観を理解する柔軟性を持つこと。これが人が辞めない会社づくりの出発点です。Z世代の特性、働き方改革の流れ、効率重視の価値観――これらを否定するのではなく、受け止めて経営に取り込む姿勢が問われます。
原則2:仕事を楽しいと感じる関わりを設計する
経営者・上司として、仕事が楽しいと思える環境・関わり・仕事を渡しているかを毎日自問する必要があります。承認の言葉、成果の共有、本人の強みを活かす役割設計――こうした地道な関わりが、定着率を押し上げます。
原則3:勤務時間内に成果を出す働き方を作る
残業を減らし効率的に働く環境を整える――これは多くの企業が取り組んでいる方向です。効率化で人手が必要になる分は、商品の付加価値向上やサービス磨き込みで補うという両輪の経営判断が求められます。
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中小企業経営者のための実務ポイント

経営者が自分基準を点検する
自分が育ってきた環境で「やって当たり前」と思っていることが、メンバーには重荷になっていないか――この点検を四半期に1度行ってください。==自分の基準を「今の時代の基準」にアップデートする==ことが、経営者の継続的な仕事の1つです。
仕事の楽しさを伝える場を意図的に作る
1on1や全体朝礼で、「この仕事の何が面白いか」「お客様からどんな反応があったか」を意図的に共有する場を設けます。経営者自身が楽しそうに仕事を語る姿が、メンバーの心の中に「仕事って楽しいかも」を育てます。
付加価値向上に投資する
残業を減らせば人手が必要になります。それを単純な人件費増として処理するのではなく、商品の付加価値・サービスの磨き込みで利益を確保するという発想を経営判断に組み込んでください。担当の税理士としても、付加価値率の改善は中堅成長企業の最重要テーマだと考えています。
人が辞めない会社づくりに関するよくある質問
Z世代と上の世代の価値観の違いは?
Z世代は効率・自分の時間・社会的意義を重視する傾向があります。上の世代の「努力=残業」モデルとは前提が異なるため、頭ごなしの否定では関係性が築けません。違いを認めた上で、共通の目的に向かう設計が必要です。
離職率の目安はどれくらい?
業種により異なりますが、年間離職率10%以内が中堅成長企業の1つの目安です。15%を超える状態が続く場合は、構造的な見直しが必要なサインと捉えてください。
退職面談で何を聞くべき?
「不満」だけでなく、「入社時の期待とのギャップ」「やりがいを感じた瞬間」「改善要望」を聞き出すことが重要です。退職者の声は組織改善の最も価値ある情報源です。
経営者にも変わる勇気は必要?
はい、必須です。「自分の経験が正解」という前提を一度手放す勇気が、人が辞めない会社づくりの出発点になります。担当税理士の視点でも、柔軟性を持つ経営者の会社は中長期で確実に強くなる印象があります。
まとめ|柔軟性が中堅企業の定着率を決める
人が辞めない会社をつくる本質は、経営者が柔軟性を持って、今のメンバーの価値観を理解し、仕事を楽しいと感じる関わりを設計することです。残業=努力という古い前提を手放し、勤務時間内のクオリティを正当に評価する仕組みを作ること。そして、効率化で必要になる人手は商品とサービスの付加価値で補うこと――この経営判断が、中堅成長企業の定着率を大きく押し上げます。==人が辞めるかどうかは、経営者の柔軟性の鏡==です。

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