「自分がいないと回らない会社」――一見すると経営者の能力が高い証拠のように見えますが、実は組織の成長を止める最大のボトルネックです。本記事では、経営者が自分の時間単価に見合った仕事に集中するための仕組みづくりを、ビデオ教育と決裁基準という具体策とともに税理士視点で解説します。
Contents
経営者がいないと回らない会社の悩み

経営者が現場業務に追われている
顧客フォロー、新規開拓、現場マネジメント、領収書整理、経理入力――こうした業務を経営者自身がやっている会社は多いものです。大きな決断やイノベーションは経営者しかできませんが、日常業務まで全て経営者がやる必要は本当にあるでしょうか。
「自分しかできない」が組織の天井になる
経営者が日常業務にも入り込んでいると、社長の時間と能力が組織の天井になります。社長の処理能力で組織のサイズが決まり、それ以上の成長ができなくなるのです。
500円の消しゴムも社長決裁という極端な例
会社で500円の備品を買うにも社長決裁が必要――こんな会社が実際にあります。そのレベルの決裁に社長の時間を使っていては、会社の未来は作れません。決裁基準が明確でない組織の典型例です。
「自分がいないと回らない」が生まれる原因

時間あたり単価の概念がない
経営者の時間あたり単価は、会社の屋台骨を支え、常にクリエイティブで先進的に成長していく仕事に対して設定されるべきです。領収書整理や経理入力に時間を使うほどもったいないことはありません。時間単価の概念がない経営者は、本来やるべきでない業務を抱え込みます。
仕事の承継ができていない
「自分しかできない」と思っている業務の多くは、実は教えれば部下にできる業務です。教える時間がないという理由で抱え込み続けると、業務承継は永遠に進みません。
決裁基準が言語化されていない
「いくらの支出なら誰が決裁できるか」「どんな案件なら部長判断でよいか」といった決裁基準がないため、すべてが社長に集中します。基準があれば、社長判断は本当に必要な案件だけに絞れます。
経営者が時間単価を最大化する3つの原則

原則1:自分の時間単価を意識する
経営者の時間あたり単価を「将来の収益に向かって最大化している状態」に保つこと。これが原則です。メンバーを大切にしたいと思うほど、自分の時間単価に見合った仕事を徹底的にし、それ以外は能力を持った社員に任せる――この発想転換が中堅成長企業の経営者には不可欠です。
原則2:ビデオ教育で承継を仕組み化する
仕事を渡すには教える必要がありますが、ここで効くのが「教える過程をビデオに撮っておく」方法です。1回教えれば、二度と教える必要がなくなります。せっかちな経営者でも「1回だけちゃんと教えればいい」と思えれば、丁寧に教えられます。マニュアル作成も劇的に短縮できます。
原則3:決裁基準を明文化する
500円の備品を社長決裁にしているなら、「○万円以下は部長決裁」「○○○万円以下は役員決裁」といった基準を明文化してください。基準を設ければ、社長は本当に重要な決裁だけに集中できます。
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中小企業経営者のための実務ポイント

ビデオ教育+複数人ローテーションで承継
業務を教える際は、1人の優秀な人だけに教えるのではなく、複数人に教えてローテーションさせるのがコツです。複数人の間で知識がローテーションされ、引き継ぎの必要がなくなる状態を作れます。
空いた時間の使い方を決めておく
業務を渡して空いた時間を「ゴルフに行く」では意味がありません。自分しかできない・自分がやるから意味がある仕事に時間を使ってください。具体的には:
- 経営の勉強
- 理念の磨き込み
- 部下との面談
- 新規の問い合わせ対応
- 戦略立案・パートナー開拓
これらに邁進することが、==会社の未来を作り、メンバーの給料を上げることにつながる==経営者本来の仕事です。
「こだわり」を手放す勇気
「自分がいないと回らない会社」は、社長のこだわりの表れでもあります。しかしメンバーの将来を考えると、社長は仕事を手元から手放し、仕組みづくりに専念する必要があります。担当の税理士として、業務承継できる経営者の会社は確実に成長スピードが上がっていく印象です。
業務承継と時間単価に関するよくある質問
経営者の時間単価はどう計算する?
シンプルには年間で経営者が生み出すべき粗利÷年間労働時間で算出できます。年商10億円規模の会社で粗利率30%、社長が粗利の半分を生む想定なら、社長の時間単価は1〜2万円以上に設定されるべきケースが多いです。
ビデオ教育はどんな業務に向く?
定型的で手順が明確な業務に最も向きます。経理処理、ツール操作、定型営業フロー、定例ミーティングの進行など。判断業務はビデオだけでは難しく、対話による教育とセットで進めるのが効果的です。
決裁基準はどう作る?
金額・案件種別・リスクレベルで層別化します。例えば「5万円以下は現場長」「50万円以下は部長」「500万円超は社長」といった金額基準と、「新規取引先との契約は社長承認」のような案件基準を組み合わせます。
業務承継後、社長は何をすべき?
戦略立案、経営理念の磨き込み、人材育成、新規事業構想、対外的なパートナー開拓など「未来を作る仕事」に集中します。社長にしかできない仕事こそ、組織の成長を決めます。
まとめ|手放すことが会社を成長させる
「自分がいないと回らない会社」を脱却するには、経営者の時間単価を意識し、ビデオ教育で業務承継を仕組み化し、決裁基準を明文化するという3つの実行が必要です。手放した時間を社長にしかできない未来創造の仕事に使うことで、会社の成長スピードは劇的に上がります。==経営者が手元の業務を手放す勇気が、組織の未来とメンバーの給料を引き上げる==のです。

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